ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ

「なぁ能登!生きている俺が羨ましいだろう!」

名台詞だと思います。


滝本竜彦ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ
引きこもりとか非モテとかをいっときキャラにしていて、エヴァンゲリオンに出てくる綾波レイを「脳内彼女」にして、リアル彼女を作ろうと頑張る話なんか書いているひとです。でも(?)この話は結構好き。

内容は、それは素敵な夢物語。

諸悪の根源とかいう、チェーンソーを振り回す不死身の怪人と夜な夜な戦う女の子、雪崎絵理。それをサポートしようとするのが主人公、山本陽介。特にスキルなし。

何のために戦うのか全くわからないけれど、ヤツを倒さなければ世界に希望はない。翻っていえば、そいつを倒せば希望がある。一見不条理な設定だけど、戦うモノがはっきり目の前に現れてくれるっていうのは、やっぱり都合のよい夢物語。

何かと常に闘っていて、でも相手はかたちも何もわかんなくて、闘い方も武器もわかんなくて、コレでいいのかと思いつつも手を打ってみる。ガチで肉弾戦するんじゃなく、ジリジリ砦をつくって広げて前線を押し出しては戻されて。ただひたすら今を今たらしめることだけが方法であるかのような、そんな闘いが日常ってものだと思うから。


コイツを倒せばかなしみが終わる! そんなもん居たら私だって闘っちゃいます。


若干結末を書いてしまいますが、陽介にとってチェーンソー怪人はやはり希望になります。「それはなんてわかりやすく、ありがたい、涙の出るような、すんげー最高な救いだったことか」って。能登っていうのは事故死した彼の友達です。彼は見えない敵とずっとずっと闘ってきて、そしてガードレールに突っ込んで自分という犠牲を払いながら、勝利を手にして永遠のヒーローになったのだと陽介は理解する。だから自分はチェーンソー男と闘って、絵里ちゃんを守って死ぬことでやはり同じ勝利をつかもうと決める。


でも、置いて行かれちゃうのです。突っ込んで行った暗闇の中で再会した能登に、「お前はダメだよ。お前みたいな中途半端な男は、どうしたってしかたがないんだ。…お前はダラダラするしかない。薄らぼんやりした幸せを楽しむしかない。すぐにでも消えてしまう幸せを、大事に大事にするしかない。お前にはそれが精一杯だ」って突き放されて、生きたまま目を覚ました雪の上で慟哭するの。


前回のエントリで友達を亡くしたことを書きましたが、図太いあたしはちゃんとその夜も眠りました。朝になって、目を覚ましかけたまどろみの中では全部忘れてて、今日何があるんだっけ…って考えて。思い出そうとして、あーCちゃんもう居ないんだって思って、起き上がって。


携帯開けたらメールが届いてました。


最近携帯でやってるオンラインゲームからの通知。メッセージがきてますよ。「今日はどこそこに攻撃ヨロシクね☆」「はぁい、今日もヨロシクお願いしまーす☆」普通に返すの。くっだらねぇあたし、って思って、…でもこのくっだらねぇことがあたしを現実に引き戻して、つないでるんだと思って、ふっと冒頭の台詞が頭をよぎって、起き抜けから泣いてしまいました。


置いて行かれちゃった。


あたしはバカだから、くっだらないことをやり続けて、そのうちそんなくっだらないことを愛しいとさえ思いながら、…いじましく生きてくしかないのです。


呆然としたり思考停止する時間は抜け出しつつあるので、心配かけちゃった人ごめんなさい、ありがとう。「キッチン」じゃないけど現実ってすごいです。やることは押し寄せてくるから哀しくても動かざるをえなくて、哀しいからって止まれないのが社会ってモノで。でも「喪」って大事だなぁとも思いました。お葬式をするのはあっちとこっちの線引きをするためだって聞くけど、その前に、その人の死をかなしむためだけの時間が許されてるのは大事なことだと思う。その人のことだけを考える、優しい優しい時間です。ものすごい間接的にしか話をきいていないから、今、仲の良かったメンバーで、何とかして彼女のところへ辿り着こうと話し合ってる。それぞれにもがいてます。


普通に連絡がとれて、次いつどこで会おうって約束が出来て会いに行けるってことが、とってもすごいことなんだってしみじみ思う。知ってた、人はよし大丈夫って安心してたらあっけなくいなくなってしまうこと。でも忘れてた。イカナイデイカナイデイカナイデ、そんなふうにすがりつくことは重いだけだと思ったし、もしかしたらそれでお互い嫌い合いながら生き残ることもありかもしれないけれど、だからって何をしていいのかわからなかった。


彼女と当たり前に会えた頃に戻りたいと思う、でも戻って何をやり直したらいいのかわからない。きっとあの頃そのまま続いていくはずだった未来と、これからは闘わなきゃいけない。家に戻れば彼女にすすめた本があって、すすめられたCDがあって、その物語の結末もやがて出るはずの新曲も、もう彼女が知ることはないことと。一緒に買いに行ったワンピースを今の私は重宝していて、生活の中にまだまだ彼女がいるけれど、やがて彼女を置いて時間は進んでいくことと。10年後、どんなふうに彼女を想うのかということ…


ちょっと支離滅裂(汗)大事なひとたち。あんまり早く、いなくなんないでください。